ヤマアリ属ツヤクロヤマアリ Formica candida
◆サイズ【女王】約10mm、【ワーカー】約4~4.5mm
◆特徴
体色は漆黒色で美しい光沢を持つ。クロヤマアリよりもやや小さい。
標高の高い山地の草原や湿原に見られる。
◆コロニー形態
単雌性、土中営巣性
◆観察地
観察地点は北関東の標高約1400m地点。生息地がアカヤマアリと重なっていた為、一帯では奴隷狩りを行おうとするアカヤマアリとツヤクロヤマアリの争いが見られた。
◆結婚飛行
7~8月。
→ツヤクロヤマアリの結婚飛行時期
◆飼育
石膏巣での加湿飼育。高標高地のアリの為、温度管理などが必要になる。
ヤマアリ属ハヤシクロヤマアリ Formica hayashi
◆サイズ【女王】約11mm、【ワーカー】約5.5~7mm
◆特徴
黒色の大型ヤマアリ。近縁種のクロヤマアリより一回り大きく銀色に輝く光沢も強い。
ハヤシクロヤマアリは林内に生息し、開けた場所にはクロヤマアリが生息する。
◆コロニー形態
土中営巣性
◆観察地
里山や低山地の森林に入れば最も多くみられるヤマアリの仲間はハヤシクロヤマアリではないだろうか。コロニーは森林内の石下や土中に見られる。
◆結婚飛行
7月。昼過ぎに脱翅雌が得られた。
→ハヤシクロヤマアリの結婚飛行時期
◆飼育
土中営巣種の為、加湿のできる飼育巣がオススメ。
ヤマアリ属クロヤマアリ隠蔽種群 Formica japonica
◆サイズ【女王】約10mm、【ワーカー】約4.5~6mm
◆特徴
灰色味がかった黒色の最普通種のアリの一つ。国内の広い範囲で公園や草地、林縁の開けた土中、石下などに営巣している為、一般的に目にすることの多い種。
近年ではこれまで1種とされていたこのクロヤマアリだが、実際には4種の隠蔽種群(クロヤマアリ、ヒガシクロヤマアリ、ニシクロヤマアリ、ミナミクロヤマアリ)からなることが分かった。
実際に観察を重ねると、地域によりサイズ差、単雌性・多雌性などに違いが出ているように思われ、これらは隠蔽種4種の違いなのかもしれない。
◆コロニー形態
土中営巣性
◆観察地
日当たりの良い開けた場所に多く見つかる。森林内に入るとハヤシクロヤマアリが多くなる。
◆結婚飛行
5~6月。標高の高い地域では7月でも飛行が見られる。
→クロヤマアリの結婚飛行時期
◆飼育
土中種の為、石膏巣などの加湿飼育がオススメ。
ヤマアリ属ヤマクロヤマアリ Formica lemani
◆サイズ【ワーカー】約3.5~4.5mm
◆特徴
黒色〜黒褐色、脚は褐色、触角柄節や脛節は黄色味を帯びる。
自然光の下で見ると黄金色に輝く美しいヤマアリ。山地に生息するアリの為平地では見られない。通なアリ愛好家は学名にちなみ彼らを「レマニ」と呼ぶ。
◆コロニー形態
単雌性、土中営巣性
◆観察地
関東〜中部地方の標高1400m以上の地域で見られた。観察した中で最も標高が高かったのは2800m地点。1400m付近では生息地の重なるアカヤマアリに奴隷狩りの対象とされることもあり、2800m付近ではクロキクシケアリと共に地表を徘徊する数少ないアリであった。
◆結婚飛行
中部地方で7月末に脱翅雌を採集。
→ヤマクロヤマアリの結婚飛行時期
◆飼育
土中営巣種の為、石膏巣などを用いた加湿飼育。高標高地のアリの為、温度管理などをする必要がある。
ヤマアリ属アカヤマアリ Formica sanguinea
◆サイズ【女王】約10~11mm、【ワーカー】約6~7mm
◆特徴
胸部と腹柄節の赤色が美しい大型のヤマアリ。黒色系のヤマアリの仲間(クロヤマアリ、ヤマクロヤマアリ、ツヤクロヤマアリ)を対象に奴隷狩りを行う生態を持つ。女王は寄生種らしく腹部があまり大きくない。
◆コロニー形態
土中営巣性、他種との混成コロニー
◆観察地
低地には見られず、ある程度標高のある(800m~1500m付近)地域の草地などで観察できた。
巣が見られたのは地表や石下。奴隷狩りによる混成コロニーが形成されている為、巣穴からはアカヤマアリと奴隷種が出入りしている様子を観察することができる。動きは早く攻撃的。
活動期には周辺のヤマアリ属の他種から幼虫や繭を奪う"奴隷狩り"がしばしば観察される。
◆結婚飛行
北関東〜中部地方の山地で7~8月に飛行が確認できた。
→アカヤマアリの結婚飛行時期
◆飼育
土中営巣種の為、石膏巣などを用いた加湿飼育。
目が良い為、光に敏感。
ヤマアリ属エゾアカヤマアリ Formica yessensis
◆サイズ【女王】約10mm、【ワーカー】約4.5~7mm
◆特徴
頭部が赤褐色、胸部が赤色、腹部は黒色の美しいヤマアリ。
草地などの明るく開けたところに巣が見られ、枯れ葉や落ち葉でアリ塚を作るという生態を持つ。
◆コロニー形態
多雌性、アリ塚を形成
◆観察地
中部山岳地帯や関東北部では標高1600m付近で営巣を確認。
場所により、広範囲にわたる営巣地帯となっているところもあれば、わずかに営巣地が残るような場所もある。
北方系のアリの為、本州では標高の高い場所で観察できる。
◆結婚飛行
中部山岳地帯では7月下旬に結婚飛行を観察。
→エゾアカヤマアリの結婚飛行時期
◆飼育
アリ塚での生活が基本のアリの為、飼育環境を作るのはとても難しい。
サムライアリ属サムライアリ Polyergus samurai
◆サイズ【ワーカー】約7mm
◆特徴
クロヤマアリによく似た黒色のアリ。クロヤマアリの仲間を対象とした奴隷狩りに特化したアリの為、大顎の形状が鎌状になっている(奴隷種の幼虫や蛹を持ち運びやすい形状)。
女王は寄生種らしく腹部が大きくない。オスアリは触角と足が白いという特徴がある。
◆コロニー形態
土中営巣性、クロヤマアリの仲間を奴隷とする為見かけ上クロヤマアリなどの巣に見える。
◆観察地
森林内の開けた場所などに見られる。平常時、巣を出入りするのはクロヤマアリの仲間である為、サムライアリを存分に観察できるチャンスは奴隷狩り行列の時。
◆結婚飛行
→サムライアリの結婚飛行時期
◆飼育